第1回 王子様なんてやるもんじゃない
15歳
人生でたぶん 1番のモテ期であった。
自分で言うのもアレだけど周りから結構愛されてたと思うし、学校の知らない後輩からもお手紙をよく頂いた。
ただし、わたしは女子中に通っていた。
あるある。
あるよね、そういう話。
なんで女子中学生ってそうなりがちなのかな、不思議。
茨城の僻地の、ちっさい学校にぎゅうぎゅう詰められて(中はめちゃくちゃ自由で動物園状態だったけど)、うちの学校も例にもれなかったって事なんだけど。
当時のミヤジはhideやGLAY好きな所から徐々にばんぎゃるの片鱗を見せ始め、
ベリーベリーショートでゴシックに憧れてピースナウとか着て王子様もどきだった。
今もそうだけど、憧れのばんどまんへの好きが過ぎると「その人になりたい」ってなってしまう。
そこから変化して、男の子みたいになってしまった訳ね。
加えてテニス部のブチョーさん、バンドもやっていたから、学校の中でもちょっと異質で目立っていたのかも。
憧れてくれる後輩や、ミヤ♡♡って寄ってきてくれる友達に
わたしはつとめて王子様であろうとした。
そうあろうとしたし、実際よく男の子と間違われていた。
自分がなりたい自分と、周りの子に求められている自分が合致していたから
非常に生きやすい期間だったと思う。
ある時下駄箱に知らない子から手紙が入ってた。
名前見ても知らぬ。部の子でもない。
読んでみたら、いつも見てます♡っていう。
まぁ、ありがちな内容だし ありがとーと思って
律儀にお返事書くじゃないか。
渡しに行ったら恥ずかしいからって友達が代理で受け取りにきて、おでれーた。
ガチかよ。とおもった。
それからは全体礼拝の帰りや教室移動のたびに、不審な人影を目撃するようになる。
そうこうしてるうちに、何回目かの手紙に
この前先輩のおうちの前まで行きました♡
まで発展してて おいこいつマジか と。
あたし顔も知らないんですけど。
こえ〜って思いながらも、ほら ぼく優しいからお返事はしてたんだよ。
そうしたらさ、
プリクラ下さい
とだけ荒々しく筆で書かれた手紙が届いた。
泣いた。
ミヤジ15歳。得体の知れない恐怖で泣いた。
この小さい校舎の中ではあるが 逃げたかった。
何故かわたしが泣いたという噂が当人の耳に入り、直接謝罪に来たが 怯えた捨て犬のようなミヤジを見て彼女は何を思っただろう
エスカレーター式に進学した高校は共学だった。
相変わらずベリーベリーショートでそこそこ王子様してたけど、ちょっときになる仲良い男の子がいた。
いるよ そんくらい。
ある日中学時代の話をしていたら
「ミヤさ、中学の頃後輩にストーキングまがいされて泣いたでしょ」
え…
「あれオレの妹なんだよね」
知りたくなかったーーーーーーーーー
時は経ち、もうだいぶおんなのこ(という年齢は過ぎ去った)してるはず。
それでも偶にガチっぽいひとに詰め寄られるのはなんでなのか。
嫌われるよりいいけどね。